ファミリービジネスの事業継続力を高めるためのBCPの重要性
はじめに
ファミリービジネスとは、家族が所有や経営に関与している企業のことです。ファミリービジネスは、日本の中小企業の約7割を占めると言われており、日本経済の基盤となっています。しかし、ファミリービジネスには、事業承継や後継者育成、経営資源や人材の確保、経営者や家族間の意思決定やコミュニケーションなど、さまざまな課題があります。
これらの課題に加えて、ファミリービジネスは、自然災害や感染症、テロやサイバー攻撃など、予期せぬ事態によって事業活動が停止したり、売上や利益が減少したりするリスクにも直面しています。このようなリスクに対処するためには、事業継続計画(BCP)を策定し、実行することが必要です。
この記事では、ファミリービジネスが事業継続計画(BCP)を策定し、実行することで、事業継続力を高めることができる理由や方法について紹介します。
ファミリービジネスとBCPの関連性
BCPとは、災害や危機的状況が発生した場合に、事業活動を継続するための方針や手順を事前に定めた計画のことです。BCPを策定し、実行することで、事業継続力を高めることができます。ファミリービジネスは、BCPを策定し、実行することで、以下のようなメリットを得ることができます。
ファミリービジネスがBCPに取り組むメリット
- 事業活動の停止や売上・利益の減少を防ぐことができます。これは、ファミリービジネスにとって重要な経営目標である企業価値の最大化に貢献します。
- 顧客や取引先などの利害関係者からの信頼や評価を高めることができます。ファミリービジネスにとって重要な経営資源である関係資本の強化に貢献します。
- 従業員や家族などの内部関係者からの満足度や忠誠心を高めることができます。ファミリービジネスにとって重要な経営資源である人的資本の強化に貢献します。
- 災害や危機的状況に対する備えや対応能力を高めることができます。ファミリービジネスにとって重要な経営姿勢である長期的な視点の確立に貢献します。
ファミリービジネスがBCPに取り組む際の課題
一方で、ファミリービジネスは、BCPを策定し、実行することにも課題があります。例えば、
- 経営者や家族間の意思決定やコミュニケーションに問題が生じる可能性があります。BCPの策定や実行においても、方針や役割分担について合意形成が困難になることを意味します。
- 経営資源や人材の確保に制約がある可能性があります。BCPの策定や実行においても、必要な設備や人員を準備することが困難になることを意味します。
- 事業承継や後継者育成に課題がある可能性があります。BCPの策定や実行においても、事業継続のためのビジョンや戦略が不明確になることを意味します。
ファミリービジネスのためのBCPの策定と実行のポイント
ファミリービジネスは、自社の特徴や状況に応じたBCPを策定し、実行することで、事業継続力を高めることができます。ここでは、ファミリービジネスのためのBCPの策定と実行のポイントをいくつか紹介します。
BCPの策定
自社の事業内容や規模、リスクやインパクトの分析、重要業務の選定、代替手段や復旧手順の検討など、基本的なプロセスを踏むことが必要です。しかし、ファミリービジネスは、所有と経営の一致により、迅速かつ的確な判断ができるという強みを持っています。この強みを活かすためには、経営者や家族間でBCPの方針や目的を明確にし、関係者全員がBCPに参加し、意見交換や情報共有を行うことが重要です。
BCPの実行
計画通りに事業活動を継続するために、訓練や演習、点検や改善などを定期的に行うことが必要です。しかし、ファミリービジネスは、経営資源や人材の確保に制約があるという課題を持っています。この課題を克服するためには、外部の専門家や協力企業などと連携し、支援や相互協力を得ることが重要です。
BCPの見直し
災害や危機的状況が発生した場合や計画内容に変更があった場合などに、計画の有効性や適切性を評価し、必要な修正や更新を行うことが必要です。しかし、ファミリービジネスは、事業承継や後継者育成が円滑に進まないという課題を持っています。この課題を解決するためには、後継者や若手社員などにBCPの重要性や内容を教育し、参加や責任感を促すことが重要です。
まとめ
ファミリービジネスは、BCPを策定し、実行することで、事業継続力を高めることができます。ファミリービジネスは、経営者や家族だけでなく、従業員や取引先などの関係者全員がBCPに関与し、協力し、改善し続けることが必要です。ファミリービジネスの事業継続力は、ファミリービジネスの存続力に直結します。ファミリービジネスの皆様には、BCPの策定と実行に積極的に取り組んでいただきたいと思います。
シニア・プライベートバンカー
平野 泰嗣