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「人的資本経営」が日本の中小企業の未来を変える!

カテゴリ: 事業承継・廃業 作成日:2023年09月13日(水)

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日本経済と事業承継の現状

中小企業の経営者の高齢化や後継者不足は、日本経済の持続的な発展という観点から見ても、非常に深刻な課題として捉えられています。

 

中小企業庁の資料によれば、2025年までに、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定。現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとされています。

 

その驚異的な数字の中で、約半数が後継者を見つけることができないという危機的状況に直面していると推計されています。このような事業承継の問題が解決されない場合、企業の廃業や売却、さらには合併などの大きな経営の変動が生じる可能性が高まり、それが地域経済や雇用環境に対して大きな打撃となる恐れがあります。

 

事業承継の核心:「人」の重要性

事業承継の成功の鍵となる要素は多岐にわたりますが、その中でも最も核心的な要素は「人」であると言えるでしょう。事業を引き継ぐ相手の存在はもちろんのこと、引き継ぐ側と引き継がれる側の双方において、事業の基盤となる人材や組織の質、そしてその量が事業承継の成功に大きく影響します。事業承継とは、単に物的な資産や株式の移転だけでなく、企業の持つ人的資本の移転、そしてその継承でもあると捉えることができます。

 

人的資本経営の定義と特徴

ここで、「人的資本」という言葉に焦点を当ててみましょう。人的資本とは、従業員や関係者を単なる労働力としてではなく、「資本」として捉え、その中に秘められた潜在的な価値を最大限に引き出し、それをもって中長期的な企業価値の向上を目指す経営の考え方や手法を指します。

 

人的資本経営の中心には、従業員の持つ能力やスキル、モチベーションやエンゲージメント、さらには健康や幸福感などの要素が位置づけられており、これらの要素を高めるための様々な施策や制度が考えられ、実践されています。そして、人的資本経営の視点からは、従業員だけでなく、取引先や顧客、地域社会との関係性も非常に重要とされ、これらとの良好な関係構築が求められます。人的資本経営は、経営の中心に「人」を据え、その持続的な発展を目指すものと言えるでしょう。

 

人的資本経営と事業承継の相互関係

この人的資本経営の考え方や手法は、事業承継の文脈においても非常に重要な役割を果たします。人的資本経営を実践することにより、事業承継に必要な人材や組織の強化が可能となります。具体的には、次世代の経営者やリーダーの育成、従業員のエンゲージメントやモチベーションの向上、組織文化やビジョンの共有などの取り組みが挙げられます。

 

これらの取り組みは、事業承継の前後におけるスムーズな移行や連携を実現するために不可欠です。さらに、人的資本経営を実践することで、企業のブランド力や企業価値が向上し、事業承継先の選択肢も広がるというメリットも考えられます。

 

また、事業承継を円滑に進めるためには、人的資本経営の視点を持つことが不可欠です。事業承継先の選定や交渉の際に、人材や組織の価値やポテンシャルを正確に評価するため、人的資本の情報開示やコミュニケーションが重要となります。事業承継先が人的資本経営に取り組んでいるかどうかは、事業承継の成否に大きく影響する要素となるでしょう。人的資本経営に対する理解や共感がある相手であれば、事業の継続性や相性が高まると考えられます。

 

事業承継後の人的資本経営の役割

最後に、人的資本経営と事業承継は、相互に影響し合う関係にあります。事業承継が成功した後も、人的資本経営の考え方や手法を継続的に取り入れることで、事業のさらなる成長や競争力の向上が期待されます。事業承継は、ある意味で経営の一つの節目や終わりを意味するかもしれませんが、同時に新たなスタートとも言えるでしょう。その新たなスタート地点で、人的資本経営を基盤として持つことは、企業の飛躍的な発展を後押しする力となり得ます。

 

ステークホルダーとの信頼構築

さらに、事業承継の過程での人的資本経営の取り組みは、企業の内外のステークホルダーからの信頼を高める要因ともなります。従業員はもちろん、取引先、顧客、地域社会など、多くの関係者が企業の事業承継を注視しています。その中で、人的資本経営の視点を持ち続けることで、企業の持続的な価値やビジョンを伝え、関係者との信頼関係を深化させることができるでしょう。

 

後継者育成と人的資本経営

また、事業承継においても、人的資本経営の考え方を取り入れることで、後継者の選定や育成、組織の再編成などの課題にも柔軟に対応することが可能となります。特に、後継者の育成においては、人的資本経営の考え方を基にしたリーダーシップの教育やトレーニングが、後継者が企業を引き継ぐ際の成功を大きく左右する要因となるでしょう。

 

結論:持続的発展のための取り組み

結論として、人的資本経営と事業承継は、中小企業の持続的な発展という観点から見ても、切っても切れない関係にあると言えます。中小企業の経営者や関係者は、事業承継を考える際、人的資本経営の視点を持ち続けることの重要性を認識し、その取り組みを進めることが求められます。そして、人的資本経営を実践する企業は、事業承継の準備や対策をより効果的に進めることができ、企業の持続的な発展を実現するための強固な基盤を築くことができるでしょう。

シニア・プライベートバンカー

平野 泰嗣

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